2025-03-15 とんかつ 成蔵

素材も調理法もとんかつである。衣は柔らかく、食感は厚切りの茹で豚のようで、豚肉のような風味はするのだが、全てが日頃食べているものとは異なる。「これに比べると山岡さんの鮎はカスや」ごっこしたくて行ってみたのだが、困惑が上回る。これはとんかつなのか?
正直、感想に窮している。この店の欠点はわかりやすい、高価で、もたれることだ。では良かった点はと問われると、ダンディな店長の爽やかな挨拶が眩しかったことか。味も賞賛すべきなのだろう、実際美味しかったと思うが表現が難しい。
思うに、この店はとんかつではなくて豚肉を味わう店だったのではないだろうか。何も付けない、あるいは塩を推奨している時点で素材の味を楽しむ店だと認識すべきだった。私の慣れ親しんだ、安価で雑に美味しいソース漬けのとんかつとは向き合う姿勢が明らかに違う、これがとんかつなのかと困惑するのも当然だ。
しかし、こう振り返ってみると、豚の味を楽しむのにとんかつという形態は最良なのだろうかという疑問が湧いてくる。完全に火を通す、成分の流出を防ぐ、余計なものを加えないと制約を考え出すと、一定理がある気がしないでもないが果たして。