2025-03-02 外食記「プクプク亭」

オムライス・カレーライス・ハンバーグ・エビフライ...洋食といえば、幸せなイメージと共になんとなく受け入れていると思うが、冷静に考えてみると洋とは何か。元々は西洋人や上流階級向けに導入された料理のはずで、その実態はフランス料理だったと思われる。他の料理を色々と取り込み、発展させ、現在への道を拓いたのはニューグランドかと思われる。何はともあれ、西洋各国の料理専門店が跋扈する現在においても、居場所を確保し続けるだけの魅力を持つことは確かである。
横浜は日吉で昼食を取ることになった。何か面白い店はないかと調べたところ「プクプク亭」という洋食屋が琴線に触れる。どうにも弁当が有名らしいが、寡聞にして存じない。味は試すとして、他に何か面白い要素はないかと調べてみると、こちらの店の舟橋シェフは、ホテルニューグランドで下働きをし、荒田勇作氏[1]に師事したことがある[2]とのこと、なかなか興味深いではないか。
心地よい気候の日曜日、11:40頃に並び始めたが、前は一組で、20分程度で入店できた。並んでいる間に、注文を取りに来る。「プクプク亭」の看板メニューは「特製ハンバーグ」。ハンバーグという洋食の定番料理は、いつ誰によって日本にもたらされたかははっきりしないものの、ニューグランドの初代料理長サリー・ワイル氏が日本に伝えたなんて伝説[3]もあるのだから、注文しない理由はない。
特製ハンバーグ
特製ハンバーグ
主役はドミグラスソースだ。馬鹿舌なのか、ハンバーグにかけられたドミグラスソースは味がはっきりしないという印象を持っている。しかし、このソースからはしっかりと味を感じる、肉も山わさび入りのタルタルソースも脇役になるほどに。何がそこまで目立つかいうと苦味だ、何よりも苦味が印象に残る。
苦味を大人な味と表現するのは嫌いだ、どう考えても苦いのが好きなのはマゾヒストである。歳を取ったら異常性癖に目覚めるとでも言いたいのか、確かに。苦いといえば、山菜の天ぷらなどは好きだが、何も苦いからという訳ではない、愛することができる程度の欠点が個性を生んでいる、そんな匙加減で許容されていると思うのだ。
では、このドミグラスソースにおいてはどうか。苦くない方が美味しいのではと思いつつも、安易に奇を衒ったと思えるほど簡単な味でもない、それは確かに個性だ。それゆえに、No.1ではないが、Only.1だとしか評しようがない。ハンバーグに何もかけないでと注文している客がいた。理解はできるが、納得はできない。それなら他の店に行けば良い、個性あるハンバーグをお求め、そんな奇特な方におすすめの一皿だと思う。

参考

3:日本外食全史 (ISBN13: 978-4750516837)