2025-04-14 黎明猥褻映画鑑賞会
公言は憚られるが、我々はポルノが好きだ。2025/04/14現在、webサイトの訪問者数ランキングを確認すると、Similarwebの集計では、pornhubが16位、xvideosが29位。Semrushの集計では、pornhubが8位、xvideosが13位に位置している。この錚々たる結果が、一部のカルト的集団によってもたらされたと考えるのは至難だろう。つまり我々は助平だ、建前としてそれを認めることはできずとも、本音は認めてあげよう。念の為に述べておくが、性の解放を唱えているわけではない、カウンターカルチャーは嫌いだ。
さて、先日友人が「私は自慰する人間なので、肉体を捨てることができない」と驚くべき形で実存の課題を克服していた。清々しく馬鹿馬鹿しいが、その度胸ある開眼を讃えたいと思うのである。彼の猥褻観念のさらなる発展を祈り、深化に役立ちそうな話題を提供してみたい。今回は、万人にとって馴染み深い猥褻映像に関する歴史の観点から試みることにしてみよう。
残念ながら、性関連の話題は、アカデミア界隈において未だに満足に取り扱われているとは言えない、そのため通史的研究も少ないのが実情である。幸いなことに、本邦においては安田理央氏が「日本AV全史」[安田]を認めている。その本の主題ではないが、世界と本邦における猥褻映画の黎明期の...というよりも前夜的かもしれないが...作品をいくつか引用しつつ紹介させていただくことにする。
1. The Kiss (1896)
1895年、リュミエール兄弟がシネマトグラフを発明し映画の時代が始まった。新たな媒体を得た人類は、早速助平な映像を作成し始める。何を助平とするかという問いに対する回答は、時代に依存するので困難であるが、助平映像作品として批判を受け公開禁止となった最初の作品は、The Kiss (Wikipedia 視聴可能)らしい。
ミュージカル「未亡人ジョーンズ」のワンシーンを撮影した云々で、内容としては男女が接吻するだけのショートフィルムである。
所感
現代人がこの映像から興奮を覚えるのは至難である。ポルノとは性行為を含む表現物を指すと思うが、この作品は接吻だけで構成されているのだから、ポルノと取り扱ってよいのか疑問に思う。
しかし、他人の接吻が不快というのは理解できる。お茶の間で熱い接吻など見せつけられた暁には、場が凍りつくことだろう。この感覚について深掘りは試みないが、性行為の連想が背後にあると仮定すれば、「The Kiss」はポルノ的作品と言っても良いのかもしれない。
一言: 退屈
2. After the Ball (1897)
安田氏に、「現存する中で最古のポルノ的映画」とされているのはAfter the Ball (Wikipedia 視聴可能)である。邦題をつけると「舞踏会の後の入浴」になるとか。タイトル通りで、女性が脱衣して、水を浴びるという内容である。
所感
脱衣といっても薄着になるだけである、もちろん、「The Kiss」が公開禁止になるぐらいなのだから、当時はかなりの過激な作品だったことだろう。しかし、安田氏の語るように本当にポルノ的作品だろうかと疑問が残る。「The Kiss」の方がまだ直裁的ではないだろうか。実は、
推定全長7分のうち2分ほどしか観ることができないが、新婚初夜の女性が男性が楽しみにするベッドの前で服を脱いでいくというストーリーである (Wikipedia)
とのことなので、残っている部分を加味すれば確かにポルノ的作品と見做せるだろう。大した内容ではないと思われるが、失われたのは残念である。
一言: 尻がでかい
3. El Satario (1907)
なぜか山の中で全裸で遊んでいる6人の女の子たちに、角を生やした悪魔が襲いかかり、一人が捕まって犯されるという内容のしょーもないアルゼンチンのポルノ作品がEl Satario (Wikipedia 視聴可能)である。フルヌードに留まらず、性器、しっかりと映される性行為、流れ出す精液、紛うことなきハードコアポルノである。
所感
「The Kiss」から10年程度で何が起きたと言いたくなるほど過激化している。安田氏曰くこの時期のアルゼンチンはポルノの映画のメッカであったとのことだが、他にどんな作品があるのか不明である。1907年としているが、それも諸説ありとのことで、フランスの作品「A L'Ecu d'Or ou la bonne auberge (1908)」の方がより古いハードコアポルノの可能性があるとか。なお「A L'Ecu d'Or ou la bonne auberge」に関しては、英語記事も映像もWikipedia上に存在しなかった。
さて、「El Satario」であるが、悪魔役の男性の馬鹿っぽいチープな被り物といい、協力的な性行為といい、気合の入っていないパロディポルノ作品として、現代に通じる要素をそこはかとなく感じる。
どの世代も自分たちがセックスを発明したと考えるものだが... [McGregor]
と、カウンターカルチャーに関連して言及した金言があるが、「El Satario」のような現代にも通じる大胆な作品を見せつけられると思い出さずにはいられない。我々が思いつくようなことなど、既にエロい人が考え、試しているものだ。
一言: この時代の避妊方法が気になる
4. すヾみ舟 (1932)
本邦においても、シネマトグラフの導入は早く、1896年のことらしい。遅くとも1928年にはヌード映画が放映されていた記録が残されていて、その頃に放映されていたのは確実なようだ。とはいえ最初の放映がいつ頃で何であったかに関してはわからない。本邦におけるポルノ映画の制作開始は大正時代との噂だが具体的な作品は不明である。詳細な記録は残されていないのかもしれない。
それでも残されている作品はあるもので、1932年の「すヾみ舟」は特筆すべきだろう、なんとアニメ作品である。本邦においてアニメ作品が本格化するのは1960年前後である、遥かに進んでいた米国においてさえミッキーマウスが登場したのが1928年であることを思うと、かなり先駆的な作品と言えるだろう。
内容は江戸時代の隅田川の川開きの夜を舞台に、お嬢さんとその乳母というふたりの女性のそれぞれの痴態を描いたもの [安田]
らしい。国立映画アーカイブに所蔵されているのは確認されているが、借用の依頼を出しても「寄贈者との取り決めで公開できない」とのことで半分失われた映画と化しているとのこと。
一言: 見させて
参考
安田:日本AV全史 (ISBN13: 978-4910315225)
McGregor:100のモノが語る 世界の歴史 3 (ISBN13: 978-4480015532)