2025-03-01 時間よ止まれ

ナザレのイエスは、わずかなパンを多くの人々に分け与える奇跡をみせた、ダンピングの可能性があるので公正取引委員会の調査が待たれる。それ以降の宗教は、分け与えるよりも奪い取る方向に鞍替えし、冷たい財布から大量の金を生み出す奇跡を洗練させ続けた。
しかし、現代において奇跡は宗教の専売特許ではない、広告配信プラットフォームこそが新たな奇跡の担い手だ。相手の財布が空でも、命じることなく可処分時間を奪い取り、広告掲載費に変換する。遂に人類は錬金術に辿り着いたのかと錯覚するが、修行を娯楽に置き換えただけで、信者を無償労働させていたどこぞのテロリスト集団とやっていることは大差ない。
SNSをやってもテロリズムには走らない、本当にそうだろうか。SNSはその効果的な「おすすめ」によって親和性の高い思想を紹介し、特定の思想で囲み、疑問を持つ機会すら奪い、凝り固めていく。身の回りでも、SNSが原因と思われるミソジニーあるいはミサンドリーに毒されている人々が散見される。反ワクチン主義者は公衆衛生の敵対者になり、国粋主義者は攘夷運動を始める。そして、私のような惨めな中年はすけべな広告で喜ぶ。
そう、電車内の暇つぶしでTPOをわきまえぬ不埒な広告を見かけた時の腹立たしさたるや、三千世界をサリンで満たさずにはいられない。ちょっと売れるからといって調子に乗るのではない、人類の叡智を集結してHなレコメンドエンジンを作成すべきだ。ビキニ級の衝撃をもう一度、やるからには見るものの性癖を捻じ曲げる渾身のすけべ広告を見せてもらいたい、感動と共に言わせてみせろ「時間よ止まれ」
というのが不朽の名作「ファウスト」の凡そのあらすじだったかもしれない、多少の改変と思い違いはあるかもしれないが大体こんなものだった気がする。嘘が何%混じっているか、皆様も読んで確認してみよう。